独の主権者教育は就学前から

主権者教育アドバイザー(総務省)・大学講師 林 大介

「政治教育・主権者教育」が充実しているといわれるドイツを、連邦議会選挙中の9月に視察した。

小学校や中学校、高校での模擬選挙や候補者を招いての討論会を見学し、政治的中立性についても伺った。そして、「選挙」以外での「主権者教育」の取り組みとして、保育園(ベルリン市)を訪問した。

高層マンションに囲まれた1階にある保育園は、目の前の芝生広場、遊具、池などがある広大な公園を園庭代わりにしているが、できてから十数年が経過した公園は荒れ始めた。そこでベルリン市は、公園を利用している保育園児にヒアリングを行い、公園の改修に反映させるというのである。

6人の4歳男女児一人一人に、握りこぶし大の緑の球・赤い球がついた長い棒2本を持たせ、公園を散策。

行く先々で「緑の棒(心地よいと感じる場所)」か「赤の棒(変えたほうが良い場所)」を地面に差す。「砂場の砂がサラサラしていて気持ちいい(緑)」「階段の脇に滑り台があるといいなあ(赤)」「昔は水遊びができたみたいだけど犬が入るから遊べなくなった(赤)」などと思い思いを4歳の子が話し、ベルリン市の職員が聴き取っていた。

年齢に応じて当事者が思いを伝えることができるよう工夫し、「子供は□□と思っているに違いない」と決めつけたり、半人前扱いしない。こうした取り組みが、主権者としての意識を高めている。

日本でも、小学校で「防犯マップ・防災マップ」を作る取り組みがある。学区域を4~5人のグループで回り、「安全な場所・危険な場所」などを記録・撮影し模造紙にまとめ、クラスや学年集会で「ここは街灯が無くて暗いから気を付けよう!」など発表し合う。

子供が気を付けるのは大事だが、この発表会に町内会や役所の職員、地元議員が参加していたらどうだろうか。大人では気付かないことを子供は感じていることが分かり、即座に街灯が設置されなくとも予算化される可能性が出てくる。

何より、当事者である子供が、自分の思いを伝えることの大切さを実感し地域の一員としての意識を抱くようになる。手間はかかるが、主権者を育てるためにはこうした機会の積み重ねが大事である。選挙だけが主権者教育ではない。