(円卓)思考・判断・表現力考

関西福祉大学特任教授 岩田 一彦

 

学校教育法第30条2項は、学校教育で重視すべき三要素として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に取り組む態度」を示している。

今回の新学習指導要領につながる中教審答申も、当然のことながらこの三要素を重視している。ここでは、三要素の中の「思考力・判断力・表現力」について考えてみよう。

これは、従来から育てる資質・能力として大切にされてきた。しかし、理念としては唱えられても、学習指導案や評価のレベルではほとんど実現されてこなかった。その理由は、三つの能力を「・」で結んで、一体として形成、評価しようとしてきたからである。

思考力、判断力、表現力は、明らかに違った能力である。全く違った能力を一体として扱うのは無理である。従って、次のように考え方を変えるべきである。

「思考力・判断力・表現力」↓「思考力、判断力、表現力」

このように「・」↓「、」と変えることが、学習指導案や評価を大きく変えることにつながってくる。

考え方を変える方向性は、中教審の審議の過程で、その一端が示された。

中教審教育課程部会、平成27年10月22日、「言語能力の向上に関する特別チーム参考資料」で示されている。

この資料では、三つの能力が、「問題発見・解決のプロセス」の中で働く「思考・判断・表現等のうち、特に重視すべきものの例」として示されている。ここで示されているキーワードは、次の通りである。

思考=(1)仮説の形成、結果に基づく推論(2)創造的思考、情報の抽出、新たな知識やモデルの創造、新たな問いの発見

判断=必要な情報の選択、結論に基づく意思決定

表現=情報相互の関係性の構成、表現、結果の構成、表現

ここで示されたキーワードを含んだ能力を計画的に育てる学習指導案の設計が望まれる。

その結果、思考、判断、表現は、学習指導の場で、焦点化して内容構成がなされ、指導されることとなる。

そして、それぞれが個別に評価できる評価問題が作成され、評価されるようになる。

この考え方は、各教科等における「見方・考え方」を「見方、考え方」に変えることによる、授業改善の取り組みにも通じるものである。