(円卓)考え議論する道徳へ

元東京家政学院大学教授 長谷徹

 

道徳の教科化が、小学校では次年度の30年度から、中学校ではその翌年度から全面実施となる。平成27年の学校教育法施行規則の改正によって、それまでの道徳が「特別の教科である道徳」となったのである。

「教科」ではなく「特別の教科」というように、「特別」の言葉が付けられたのには、どのような意味があるのだろうか。

教科については、何をもって教科とするかについての法的な根拠や定めがあるのではなく、一般的に教科は「専門の免許をもった教師が、教科書(教科用図書)を用いて指導し、数値による評価をする」ということが共通にいえることであるとされている。したがって、これに当てはめると、道徳授業は、道徳の免許を所有している教師が教科書を用いて指導し、その結果について数値による評価をしなければならないということになる。

改訂された学習指導要領によると、中学校では「学級担任の教師が行うことを原則とする」であり、評価については小・中学校ともに「数値による評価はしない」となっている。したがって教科書が教科としての条件に適うものである。これが、単に教科ではなく「特別」が付いた要因であると考えられる。

また、「特別の教科」になって道徳授業が大きく変わってしまうのではないかという疑問が出てくるが、結論からいえば基本的な考え方には大きな変化はないということである。道徳授業で育成すべきなのは、道徳的判断力や心情、そして道徳的実践意欲と態度といった道徳性であり、内面的な資質である。育てる資質については変化はないが、授業の在り方については、工夫や改善が求められている。

「読む道徳から考える道徳、そして議論する道徳へ」である。これまで、ややもすると教材に登場する主人公等の行動や心情などの読み取りに終始していたのではないか、という課題に対しての学校からの発信が期待されているのである。

指導の結果である評価についても、子供の成長を見取り、励ましとなるような文章による記述が求められている。したがって、学校では、変わるものと変わらないもの、さらに工夫改善しなければならないことの見極めを的確に行うことが必要である。

(元文科省「道徳教育の充実に関する懇談会」委員)