(円卓)持続可能なまちづくり

福岡県大牟田市教育委員会教育長 安田昌則

 

「桜で美しい学校、まちにしたい」——。

児童たちの純粋で心からの思いが地域を動かした。半世紀前、学校創立の際、住民が校庭やまちを桜でいっぱいにしたが、現在はその木々もまばらである。児童たちは、まず校庭に植樹する桜の苗木を得るため、オリジナル煎餅の販売や募金の呼びかけをした。校区内を隅々まで回って調査し、地域住民との懇談会で桜植樹への思いと計画を訴えた。

児童たちの懸命な姿と行動に地域の多くの方々が感動し、賛同した。そして、「桜プロジェクト」として地域を挙げた取り組みとなったのである。校区の商店組合も趣旨に賛同し、本プロジェクトの応援団としてリーフレットを作成し地域に配布。地域も少しずつにぎわいを増しているようだ。

感動は世代を超える。感動は時間・空間を超えて人の心をつなぐのだろう。ゲーテの言葉に「心の底から出てこなくては、人の心に届かない」とある。児童たちの自分の住むまちをよくしたいとの心は、たくさんの大人の心に確実に届いている。

さらに、東日本大震災復興の活動として桜を植樹している小学校を知った児童たちと教職員は、気仙沼市まで桜の苗木を送っている。お礼の手紙と植樹の写真が送られてきた。厳しい状況の中で、明るい表情の東北の児童の姿を見て、かえって元気をもらったという。

これらの話を聞き、他者への慈しみの行為は、自己の善なる生命の発露、自覚を促すものであると思った。

本市では、平成23年度に全ての市立学校が一斉にユネスコスクールに加盟し、ESD(持続可能な開発のための教育)を推進している。吉野小学校の桜プロジェクトは、ESDの一環である。他の学校でも、これまで以上に活気ある校区にしようと、地域に出かけての発表会や清掃活動など、自分たちでできることを考え行動している。自分たちの住んでいる校区のよさの発信や行動に、保護者や地域の方々から賞賛の声が寄せられるようになり、まちづくりへの気運が高まってきている。

持続可能なまちづくりを担う児童に対して、未来の行動に期待するだけではなく、現在も地域住民の一人としてできることから行動するよう育んでいきたい。桜花爛漫の春はもうそこまで来ている。