【連載】ESDの魅力 その10 深い学びに深く関わる

永田台ESDデザイン、ケアが浸透した教育活動
永田台ESDデザイン、ケアが浸透した教育活動

横浜市立永田台小学校長 住田昌治

 

「一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる。教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためにはよりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる」

これは、公表された次期小学校学習指導要領(案)前文である。改めてこれからの教育のあり方が確認された。これまでESDに関わってきた者にとってうれしい表記でもある。

「持続可能な社会の創り手」になるためには、「持続可能な社会の担い手を育む教育=ESD」は欠かせない。教育課程の審議の過程でも「持続可能」「ESD」との表記がたびたびあったことから考えてみても、論点整理から重視されてきた資質・能力の議論とESDは重なる。また授業改善の視点として示された「主体的・対話的で深い学び」は、ESDで重視してきた「自発的・参加型・価値変容」とも重なる。

では、次期学習指導要領がESDと重なるので、取り立ててESDに取り組まなくてもいいのだろうか。

ESDの学びは、氷山に例えるなら海に沈んでいて見えない大きな部分に当たる。知識や技能の習得、思考力・判断力・表現力が氷山の見える部分だとしたら、ESDの学びはそこから導かれた価値・行動・ライフスタイルの変容を求めるものである。人としてのあり方や生き方にも関わる教育である。ストレスフルな現代社会をいかにストレスレスの社会に変えていくことができるのか、教育現場では大きな課題となってのしかかっている。

持続可能な未来社会を担う子供たちが、人としてのあり方、生き方を深い問いの中で学んでいくことは重要だ。身近な地域を含めた社会とのつながりの中で学び、自らの人生や社会をよりよく変えていくことができるという実感を持つことは、貧困などの目の前にある生活上の困難を乗り越え、負の連鎖を断ち切り、未来に向けて進む希望と力を与えることにつながる。そして、その学びが、地球規模の課題解決の手掛かりともなる。

今起こっている悪循環を断ち切るためには、学習指導要領を基にした教育課程において学び、その学びをさらに深め、深い次元の変容をもたらすところにESDがある。そういうと、ESDはとても難しいと思われるかもしれないが、これまでにも伝えてきたように、意識変革によって実現するものである。

それぞれの学校や地域においてESDの視点(コアやビジョン)を決めて、その視点が全ての教育活動において意識されるようにすることで実現する。

次期学習指導要領(案)の公表を受けて、学習指導要領とESDの重なりを喜びつつ、持続可能な社会の実現を志向した深い次元の変容がおこる教育への転換のチャンスと捉えたい。