家庭の運動軽視 豊かな心を育てるために警鐘を

ベネッセ教育総合研究所は、10月26日、「学校外教育活動に関する調査2017」の調査結果を公表した。保護者の教育に関する意識や子供の学校外教育活動の実態を過去2回(2009年、13年)における同様の調査との経年比較を通し明らかにしようというもの。3~18歳の子供を持つ母親1万6170人が対象となった。

調査結果の主な内容は、(1)保護者の約7割が教育費に対し「かかり過ぎ」と回答(2)習い事や部活動などの学校外教育活動費が最も多いのが中学3年生の時期(3)子供一人当たりの費用は8年前の調査と比べ月2200円減少(4)世帯収入や居住する自治体の人口規模による子供一人当たりの活動費の格差は8年前の調査と比べ変わらない(5)保護者はスポーツや芸術よりも勉強を重視する意識が8年前の調査より12ポイントも上昇――などの結果が出た。

前々回や前回よりも調査対象となった家庭の世帯収入額の平均値は上昇しているが、生育環境による個人格差は相変わらず大きい。そのことに関連して、今回最も注目されるのが(5)の結果だ。重い負担を感じながら子供の教育費を重視する背景には、保護者の教育に対する期待と不安がある。その結果、スポーツや芸術よりもまずは勉強に力を注いでもらいたいといった結果につながったのであろう。

1985年に子供の体力低下が指摘されて以降、その傾向は止まらず、文科省は2004年、「子どもの体力向上のための総合的な方策(答申)」を出し、本格的に対策を推進。わずかであるが近年になって数値は上昇傾向にある。子供の体力低下に伴うリスクは、(1)平衡感覚や反射神経などの神経機能が低下し体のバランスが維持できない(2)脳の未発達を促し感情のコントロールができない(3)肥満が増加し若年期から生活習慣病を発症(4)猫背や骨折など骨の異常化が進む――などが挙げられる。子供の体力低下は、生涯を通じて悪影響を及ぼす可能性が高いことは明白だ。今回の調査結果はこれまで食い止めてきた子供の体力低下を再び促す危険性があると言ってもよい。

もうひとつ気になるデータがある。それは子供の家庭におけるスマホやパソコンによるゲーム時間である。文部科学省が今年4月に行った学力・学習状況調査において、「平日にゲームで1時間以上遊ぶ」と答えた子供の割合が小学生で55.1%、中学生で58.4%となり、過去最高となった。過度のゲーム遊びがもたらす弊害はすでにあらゆる方面から指摘されているにもかかわらず、この結果が物語ることは何であろうか。ゲーム機などを買い与え管理するのは家庭の責任であるが、それがおろそかになっていないか。小・中学生を子供に持つ親の世代がゲーム世代であるのも関係はあるだろう。ゲームの遊び時間の増加は、学力だけでなく体力にも大きな影響を及ぼす。

現行の学習指導要領は、「生きる力」の育成を目指し、知・徳・体のバランスのとれた教育の重要性を示唆してきた。次期学習指導要領もその理念を引き継いでいる。少年期からのスポーツや芸術の経験は、学力や体力だけでなく、豊かな心をも育む重要な教育活動である。秋田県や福井県の事例で注目されたが、わが国の子供の学力を向上させた要因の一つに家庭学習の充実がある。体力向上や豊かな心の育成においても家庭の果たす役割は重要だ。教育の無償化を推し進める一方で、国はもう一度、家庭や社会に向け警鐘を鳴らし、スポーツや芸術がもたらす教育効果の情報発信をすべきではないだろうか。