社会に開かれた教育課程 好例の1つが東京都墨田区に

東京都墨田区教委の学校支援ネットワーク本部は、平成21年度から「墨田区学校支援ネットワーク事業」を始めている。年度ごとに充実・発展し、各学校が「生きる力」を育むために実施した地域・企業による出前授業などが功を奏して、「社会に開かれた教育課程」の実現に役立っている。

その詳細が、同区教委が2月13日に開いた「第8回墨田区学校支援ネットワーク・フォーラム」で明らかにされた。出席者は学校関係者だけでなく、事業所・団体のボランティア、保護者など多彩で、従来の教育研究会などとは趣を異にしていた。

「学校・家庭・地域が一体となって、地域ぐるみで子育てを行う体制を整備する」のが、支援ネットワーク事業の目的。「学校の教育活動に地域の教育力を導入することで、学校教育を支援」していく。

事務局を教委内に設置し、各学校に担当教員を配置。学校と地域や企業との橋渡し役となる地域コーディネーターを元PTA役員に依頼するなどで組織的運営に努め、出前授業による学校支援を展開する。

出前授業は、各学校のニーズ重視から、学習指導要領の改善事項に焦点を移行させた。例えば、「言語活動」「理数教育」「伝統・文化」「道徳教育」「外国語教育」「情報教育」「キャリア教育」「食育」などである。

この事業は、平成20年度から開始された文科省の「学校支援地域本部事業」の国庫委託事業として実施された。発足当時は、区内13の中学校からスタート。協力団体は東京商工会議所、経済同友会、日本IBMなど17団体に過ぎなかった。それが27年度の実績で見ると、小学校への働きかけもあって、実施学校数は、延べ316校(授業回数513回)、協力団体数は302団体、派遣講師数は1172人、出前授業を受けた児童生徒数は延べ約2万3千人に達していた。

出前授業のメニューで人気の高かったのは、平成28年度の実績で、「租税教室」「水道キャラバン」「昔のくらし体験」「すみた清掃事務所」「薬物乱用防止教室」などだった。

こうした出前授業に対する事業所側からの評価はどうか。今年度のアンケートによると、「児童生徒の授業への取り組む姿勢や反応」は、「大変良かった」「良かった」を合わせるとほぼ100%だった。「学校の印象や先生方の印象」も「大変良かった」71.2%、「良かった」21.1%にも達していた。

この事業に指導的立場で協力してきた東京女子体育大学の尾木和英名誉教授は、この日のフォーラムで、「この事業は新しい学びを開くもので、新しい学習指導要領が目指す『主体的・対話的で深い学び』に通じるものだ」との見解を示した。

「これからは、学習者を受け身の立場に置く学びではなく、学習者が主体的に学習活動を展開し、意欲的・積極的に協働の学びを生かし、自らの知的好奇心を働かせ、深い学びを実現する」「墨田区の伝統や文化に立脚した広い視野と深い知識を」「社会の激しい変化の中で、何が重要かを主体的に判断し、たくましく豊かに生きることを目指す」などと説明した。

この事業が「生きる力」の強力な礎になるために、関係者のさらなる努力を願いたいものだ。

本紙では、27年度から同事業の一部を委託されて実施しているNPO法人スカイ学校支援ネットワークセンターの森本芳男理事長による連載を、前号から始めている。