【GIGA到来】1人1台は前提条件 地方私立高校の生存戦略

小中学校に続いて、高校のGIGAスクール構想に向けた動きが活発になっている。静岡県にある私立、御殿場西高校(大塚勇介校長、生徒808人)は、昨年の一斉休校をきっかけに、1人1台環境の実現を急ピッチで進めるなど、改革の過渡期にある高校の一つだ。同校の勝間田貴宏副校長は「ICTを入れることは前提条件。そこから本当の勝負が始まる」とその先を見据える。ICTの導入を契機に学校改革に着手した、御殿場西高校の挑戦を取材した。

コロナでICT導入が一気に加速

「『このままではまずい』『変わらなければいけない』という思いはみんな持っていたが、日々の業務を優先していく中で、何をどう変えたらいいか、正直分からなかった」

学校経営を担う立場にある勝間田副校長の悩みは、多くの地方の高校に共通している。地域の少子化が進む中で、どうやって生徒を確保していくか。「現状維持では他校との競争に負けてしまう」という危機感はあっても、具体的な改革プランにまではなかなか落とし込めていなかったという。

それでも同校は昨年に、勝間田副校長を中心にスクールイノベーション委員会を立ち上げ、全国の先進校を訪問するなどして、改革のヒントを探ってきた。これらの学校に共通していたICTとグローバルを軸に、学校を段階的に変えていこうと考えていたところで、新型コロナウイルスによる一斉休校という緊急事態がやってきた。

当時、特進コース以外ではICTを活用した授業はほとんど行われておらず、教室には電子黒板やWi-Fi環境もなかった。休校中のオンライン授業は、多くの教員が「Zoomとは何?」という模索の段階から始め、生徒個人のスマートフォンや家庭のタブレット端末によるオンライン授業を、「できるところからやる」のがやっとの状況だった。

授業でクロームブックを使って学習する生徒(御殿場西高校提供)

学校再開後、教職員の間では「コロナに負けない学校にしなければいけない」という共通認識が生まれ、スクールイノベーション委員会を中心に、ICT化を一気に加速させる方針を決めた。早速、今年度の新入生から、グーグルのクロームブックを購入し、1人1台環境がスタート。9月までには、全ての教室に電子黒板を配備する計画だ。

教員間でも新しく導入されたアプリの使い方や、ICTを活用した生徒主体の学びへの転換を目指し、頻繁に研修会が行われるようになった。「完璧なスタートは考えていない。走りながら成長するし、失敗は成長のために必要なステップだと捉えている。経験したことのない変化が毎日起きて大変ではあるが、学校の雰囲気は確実に前向きになっている」と勝間田副校長も組織の変革を肌で感じ取っているという。

魅力化に向けた次の一手

しかし、御殿場西高校が本当に目指している未来の学校の姿は、ICT化の先にある。勝間田副校長は「どの高校でもあと1、2年で1人1台は当たり前になる。いわばスタートラインに立ったに過ぎない。どうやって学校としての魅力を打ち出していくか。ここからが本当の勝負だ」と意気込む。

そこで、同校が今、力を入れようとしているのが、グローバルと地域連携だ。

魅力化に向けたビジョンを語る勝間田副校長(本人提供)

もともと、オーストラリアに系列校があり、毎年10人程度、希望者による系列校への留学を行っていた同校だが、その対象国や受け入れ規模を拡大し、希望する生徒であれば全員留学できるようにするという。しかも、留学期間は1年以上と長期にわたる。

「1年生のときに探究したことを、2年生の留学でフィールドワークし、日本に戻ってきたらプロジェクトとして取り組む。そういう3年間を通じたプログラムにしていきたい。留学だけでなく、プラスアルファの部分も充実させなければ、グローバル教育とは言えない」と勝間田副校長。来年度からは従来の進学コースの中に、新たに「グローバル専攻」をつくり、英語教育やグローバルな探究学習を展開するという。

また、それ以外のコースでも、修学旅行の行き先を海外中心に変更し、単なるツアーではなく、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関連したフィールドワークを主体にしたプログラムに刷新する予定だ。

もう一つの柱である地域連携では、同校がイニシアティブを取り、「御殿場市ハイスクールフォーラム」を今月から立ち上げる。市内にある4つの高校と市の青年会議所が連携し、地域社会の課題について、高校生がSDGsの観点から1年間かけて解決策を練り、行政や企業に提案。事業として可能性のあるものは、地元企業からの出資や応援を募るなど、アントレプレナーシップ教育の側面も持たせるという。

「高校を生徒と地域の大人が協働するハブスポットにしていきたい。そのためには、教員も主体的に地域と関わっていかなければいけない」と勝間田副校長。最近では、SNSなどで積極的に情報発信をしていることもあってか、地域から「最近、『御西』は変わってきたね」と声を掛けられることも増えたという。

勝間田副校長は「ICTはあくまでも当たり前のツール。それを生かして、グローバルと地域連携を加速させ、2030年を見越した教育を一気に実現させたい。生徒を確保することが目標ではなく、全国のモデルになるような学校にならなくてはいけない」と、地方の私立高校の未来像を語った。