学習指導要領案 教科・領域改訂のポイントをどう考えるか 〈14〉小学校生活科
学習指導要領案の生活科について、改訂のポイントを、日本生活科・総合的学習教育学会副会長の野田敦敬愛知教育大学教授・副学長は、次のように指摘する――。
◇幼児教育の方向目標を強調するあまり◇
育成を目指す資質・能力の3つの柱に沿って、教科目標や各学年目標と内容がうまく構造化されたと思う。
しかし、この改訂案で、教科目標が「具体的な活動や体験を通して、身近な生活に関わる見方・考え方を生かし、自立し生活を豊かにしていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す」となった。平成元年の生活科新設以来、教科目標の最後に究極の目標として掲げられた「自立への基礎を養う」が消えた。
今回の改訂案では、学校間の接続が重視され、幼児教育と小学校教育の接続として「スタートカリキュラム」などが強調されている。
幼児教育の終わりまでに育ってほしい10の姿の中に「自立心」がある。幼児教育の10の姿は、方向目標であり、そのすべてが幼児教育の終わりまでに育っているかというと、その内容から判断するとかなり難しい。
小学校教員は、幼児教育で育てようとしている10の姿について理解する必要はあるが、「自立心」がその中にあるからといって、「自立への基礎を養う」を生活科の教科目標から削除してしまうのは、本末転倒だろう。
幼児期の方向目標である「自立」を小学校低学年期の生活科で、「自立への礎(いしずえ)」としてきちんと養うのは極めて重要である。
◇体験を通しての視点を忘れずに◇
内容については、例えば、内容(4)「…それらのよさを感じたり働きを捉えたりする…」、内容(5)「それらの違いや特徴を見付けることができ…」などは、指導法を間違えると客観的な知識の理解になる恐れがあり、心配である。
また中教審答申の別添7―2の資料「生活科における教育イメージ」は、低学年はもとより、幼児教育から小学校中学年教育の中核に生活科が据えられている。
しかし、中学年や幼児教育、同学年で展開するほかの教科などにも関連させる点を考え過ぎた場合の心配がある。
生活科を餅に例えれば、あちこちに引っ張られ、どんどん伸びて、肝心の真ん中が薄くならないかという思いがある。
まずは、生活科学習が独自に持つ特質の充実に重点をおいてほしい。
最後に、低学年の2年間で生じる学力差は、後々かなり効いてくると思う。中教審の審議の中で、「特に低学年の頃に生じた語彙力の違いが、その後の学力に影響」と述べられている。
今後も、体験を通して語彙力を育成し、さまざまな個性をもった子供が、自身の思いや願いの実現に向けて、のびのびと活動できる生活科を目指したい。
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