読み手を引き込む論文に 採点官に熱意を感じさせる5つのポイント

夏の試験まで、あと5カ月——。29年度実施(30年度採用)の試験に受験予定の人は、もう臨戦態勢でなくてはならない。教員を志す人の論作文を読んでいて、ぐっと引き込まれるときがある。論文対策として、すでにどんどん書き進めているころだと思うが、やみくもに書くだけではなく、読み手を引き付ける論述とするためのポイントがある。それは、次の5つ——。

教職への熱望を伝える 文末表現に気をつける

ぐっとひき込まれる論述に共通していえるのは、子供たちへの思い、教育に対する熱い思いが示されていることである。思いがいかにうまく伝えられているか、それを第一に考えたい。もちろん文章の書き方は重要で、流れがきちんとしたまとまりのある文章を書けるよう努力したい。だが、それができたとして教職への熱い思いが伝わってこなければ意味がない。

まず、今一度、自分の教職への思いを見直してみよう。本当に自分は教師になりたいのか、子供たちとともに学んでいきたいのかを自問し、自分の志を確かめたい。その上で、自分の性格、資質などを見つめ、教職で生かせる、教職に向いている部分に焦点を当て、自分はそれらを生かしながら子供たちに誠心誠意愛情を注いでいくことができるかどうか、覚悟を決めたい。

では、その覚悟をどうすれば論作文に示せるのか。心構えをしっかりとした上で、技術的なポイントを一つ。文末の表現に留意しよう。「…と思う」「…と考えられる」などあいまいな表現を避ける。客観的な表現では思いは伝わらない。「教員になって、子供たちを指導したいと思っている」ではなく、「指導したい」と言い切る。自信を持って、熱意、思いを伝えよう。

説得力をもたせる 資料や体験を的確に取り込む

一般的に「説得力のある」論文が、評価の高い論文となる。説得力があるかどうか、なければ何も伝わらない。説得力を持たせるにはどのようにしたらよいか。

提示する意見や考えに客観性を持たせるよう努力しよう。与えられたテーマについて論述を展開し、自分の意見、考えを示していくのであるが、それが独善的なものではない、偏った考えではないように示したい。それには、背景となるもの、根拠があるものを的確に提示するとよい。

例えば中教審の答申、テーマに関連した文科省の通知、研究機関の調査報告書などの関連する資料等の内容が、さりげなく盛り込まれていると客観性が高まる。文教行政関連の各種答申、通知、報告書の類に目を通しておくように再三当紙面で強調しているのは、このためである。教育に関する多様な調査結果も公表されているが、その数値などが組み込まれていると、客観的な根拠を持った論述となる。

また、体験を上手に生かした論述にしたい。テーマに関連した体験、事例を探し、それに基づいた論述を展開する。提示された課題に対して、自分なりの考えを論述したり具体的な方策を述べたりという部分で、例えば教育実習での学習指導や生活指導に関わる具体的な学びが、その論述の中に効果的に生かされていると、訴えかけるものが大きい。示された課題を受け止め、関連する体験や事例に基づいて論述し、適切な結論にしっかりと結び付けていく、という流れである。

学生は自分の学校時代を振り返り、さらに教育実習、学校ボランティアなどにおける体験をしっかり整理しておくとよい。

もちろん臨採は、それ以上の事例を持っていると思われるので、あらかじめ課題別に自分の体験をまとめておく。教育実習やボランティアでの体験、さらには自分が受けてきた教育における体験を論述に上手に生かすことがポイントとなる。

知的な関心を示す 歴史的な経緯や背景など

論文を執筆する際は、与えられたテーマについて一定以上の知的な理解が必要となる。テーマについて背景や現状、一般的にどのような意見があるのか、などの知的な理解があるのとないのとでは、論文としての出来上がり具合が大きく異なる。それは、論文としての説得力を高めるのはもちろん、熱心に勉強しているかどうかなども示し、論文から執筆者(受験者)の知的レベルを感じさせる。

学習指導要領案では別の言葉に置き換えられてしまったが、例えば今回の改訂のキーワードとなっていたアクティブ・ラーニング。「アクティブ・ラーニングの重要性」が論文のテーマとして設定されている場合、次のような知的な理解がある上で執筆されているのかが問われてくる。「アクティブ・ラーニングが重視されるようになった歴史的経緯」「アクティブ・ラーニングが重視されるようになった背景や現状」「アクティブ・ラーニングに対する多様な意見」などである。

これらの内容がそのまま論文の中に組み入れられているかどうかではなく、理解した上で論述しているのかが評価されるわけである。採点官はベテランの校長などであるから、論文を読めば、受験者が理解しているのかどうかすぐにわかる。

現在の学校教育には多くの課題がある。学力向上、学習意欲、いじめなど問題行動、チーム学校、グローバル化、学校評価、保護者への対応などがあり、これらが教採試験の論文や面接の課題に取り上げられる場合が少なくない。歴史的流れ、社会的背景を知っているかどうかで論文のレベルが異なってくるし、評価も違ってくる。ぜひ情報収集に力を入れたい。

一貫性のある流れにする まずは全体を構想する

分かりやすく高い評価を得る論文には、一貫した流れがあり、書き始めからまとめまできちんとした主張が示されている。

最初に主張したことが途中で怪しくなり、消えてしまい、最後には異なった内容となってしまう論文をよく見る。学力向上について述べていたのに、最後には表現力の育成になってしまった論文。これは、上手に情報の交通整理と取捨選択ができないからだ。論を進めていくうちに、あれも重要これも重要、といろいろなものが頭に浮かんできて、うまく整理ができず、多様な内容に触れてしまったために、最初とまとめが矛盾してしまったと考えられる。

これを防ぐためには、テーマを与えられた際、すぐに書き始めるのではなく、構想をきちんと練ることである。まずはどのように導入部分を書き始めるか、主たる論述ではどのような展開にして、前述のように知的な理解を示したり具体的な体験や事例を盛り込んだりしていくか、そこからどのような主張をしていくか、まとめではどのように自分の意思や意欲、熱意などを示していくか、しばし時間を取って考えたい。その際、メモをしっかり取るとよい。

採用試験では緊張するものである。課題の書かれた用紙や論述するための用紙が配られ、さあ執筆開始となると緊張感は最高になるだろうし、そのため頭が働かない事態にもなってしまう。焦って書き始めてしまうと、事例は別の方がいいか、論述の根拠が少し曖昧ではないか、表現が変ではないかなどいろいろ気になってくる。

そこで、まず課題に目を通したらすぐに書き始るのではなく、しばらくは論文の全体像を構想する。この時間が逆に落ち着きを取り戻すのに役立ってくる。日頃から論文の柱立てやまとめの表現などについてはしっかりと練習をしておけば、構想後に焦らずに執筆に取り掛かれる。

最終的には教職への思い 形式は考慮しつつも内容重視

形式は、読みやすくするために重要である。例えば、「はじめに」で始まり、本論があり、最後にまとめで締めくくる、というパターンは論が分かりやすくなる。形式をしっかりと踏まえ、内容も適切に書かれていれば、それは標準点にはなる。だから形式を軽視することはない。だが、合格するためには、標準点を超えなくてはならないのだ。

採点官は、受験者が課題に対してどのような考えを持っているのか、その課題解決にどのような策を講じようとしているか、どのような具体的な事例を持っているのか、などに関心がある。さらにその論述から教職への強い意欲が感じられるかどうかを読み取ろうとしている。

「学力向上に学級担任としてどのように取り組むか具体的に述べよ」との課題がある場合、学力についてどのような考えを持っているか、そして向上を目指し具体的にどのような対策を講じるか、が大事である。課題をどう受け止めたのか、自分のこれまでの実践を生かしながら教師になってからどう取り組むかを論述し、そこにさらに教職への強い思いを表現する。そのような論述ができれば標準点を超え、合格となる。

採点官は、自校の一学級を、その児童生徒をこの受験者に任せてもよいかどうか、そこを判断したいのである。それにはやはり、教職への思いを強く表現する必要がある。