地域で豊かに生きるために 食への興味関心の高揚目指す

三重県立松阪あゆみ特別支援学校 栄養教諭 宇田 保奈美

本校は、2018年4月に開校した知的障害に対応する特別支援学校である。「自立と共生~地域で豊かに生きる子どもを育てます~」を学校教育目標として掲げ、それぞれの発達段階に応じた教育を推進している。開校2年目の19年度には文科省の事業である「つながる食育推進事業」を受託し、学校・家庭・地域が連携した食育の推進を図った。

つながる食育推進事業の取り組み内容
1.子どもたちの食に関する興味関心の高揚および自己管理能力の育成
(1)栽培や調理などの体験活動の充実

野菜の栽培「苗植え」の様子

野菜の栽培や収穫・調理など、体験活動の充実を重点として取り組んだ。それぞれの活動において、児童生徒一人一人が視覚・聴覚・嗅覚などの五感で特徴や変化、違いなどを感じることを大切にした。植物の葉や茎の感触、採れたての野菜の匂い、食材を切ったときの断面の色や形、調理中の音や匂いの変化など、児童生徒自身が実際に感じることで、生き生きと活動に参加する姿が見られた。またそれらの体験は、食に関する興味関心を高めるだけでなく、偏食の改善などにもつながった。

(2)給食メニュー選挙を通した主体的に食にかかわる態度の育成

本校の実態として、給食など食べることへの意欲が高い児童生徒は多いが、食材や献立などを主体的に選択する機会が少ない現状があった。そこで、主体的に食を選択する機会の設定を目的として、主権者教育とも関連させながら全校で給食メニュー選挙を実施した。この取り組みは、食への興味関心を高めるための手だてとして、小学部から高等部まで全学年の児童生徒に有効であったと感じる。また、教職員にとっても児童生徒の実態把握に役立つ取り組みであった。

2.栄養教諭と教職員の連携および指導力の向上
(1)栄養教諭と教職員の連携

高等部では、担任、養護教諭、栄養教諭が「歯と口の健康について」をテーマに連携して授業を行った。養護教諭の指導のもと生徒が自身の口内環境について知り、その後、栄養教諭が食の面から歯と口の健康について指導した。生徒の実態を把握している担任とそれぞれ専門的な知識を持つ養護教諭、栄養教諭が連携して授業を行うことで、つながりのあるより効果的な指導になったと感じる。

(2)栄養教諭を含めた教職員の指導力の向上

特別支援教育を推進する上で、専門的な知見に基づく指導は必要不可欠である。食に関する指導においても、障害の特性を理解した上で児童生徒一人一人の現状を把握し、課題解決の方法を探ることは重要である。

作業療法士による食育講演会

そこで、作業療法士を講師に招き、保護者および教職員対象の食育講演会を実施した。講演会では、障害の特性による「こだわり」や「偏食傾向」の事例などを通して、改善の手だてについて具体的に学ぶことができた。例えば、偏食の原因は味だけでなく、「こだわり」や「感覚過敏」などに起因して温度や食材の形状、調理方法、色などさまざまな要因が影響している可能性があることなど、食に関する課題について新たな視点とアプローチ方法を得ることができた。実践例の紹介や現状に対する具体的な助言も得られたことで、各担任がすぐに実践に移すことができた。

(3)家庭や地域との食を通したつながりの醸成

家庭との食を通したつながりとしては、日々の給食の喫食状況や家庭での様子など日常的に情報共有を行ってきた。この事業をきっかけに各種アンケートを実施することで、より家庭の実態や保護者が求めている情報を把握することができた。

シイタケを栽培するなど体験活動を充実させた

地域とのつながりに関する取り組みとしては、生産者を招いてのシイタケ栽培や、茶道の講師を招いた茶道体験、地域の高校との交流などの機会を設定した。開校2年目の新しい学校として、地域とのつながりをつくるよい機会となった。

今後に向けて

野菜の栽培をはじめとする体験活動や給食メニュー選挙などの食に関する指導、教職員が連携した食育の推進、家庭・地域とのつながりなど、つながる食育推進事業では本校の食育活動の基盤をつくることができた。本事業をきっかけとして始まった取り組みの多くは現在も継続して行っている。児童生徒が地域で豊かに生活することができることを目指し、今後もそれぞれの発達段階に応じた食育を学校・家庭・地域が連携して進めていきたい。


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