【発達障害の早期支援(4)】「叱る」が困った行動を増やすことも

ADDS共同代表 熊仁美
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今回は、「お子さんが困った行動をしているときはあまり注目をせず、良い行動をしているときに注目して褒める」という、行動の原理に基づいた対応の重要性を解説します。

応用行動分析学(ABA)に基づいた関わり-良い行動を引き出し褒める

前回触れた通り、人間の行動は「後続事象」によって維持されています。後続事象が「ご褒美として機能している」かどうかは、シンプルに行動が増えているかどうかで判断しなければいけません。

すなわち、「授業中に困った行動を起こす子をその都度叱ったり言い聞かせたりしているが、困った行動が減るどころか増えていく」という場合は、先生が叱ることが「ご褒美になっている」と考えるのです。

学校現場では、「叱ることが、困った行動を増やす」というネガティブな循環が多く見られます。例えば、ある子は、苦手な国語の授業が難しくて分からない→立ち歩く→先生に叱られる、ということを繰り返していました。その子にとって、「先生からの注目」がご褒美のような働きをして、困った行動を増やしてしてしまっている例です。

背景には必ず、「そもそも授業が難しくて参加できない」といった困り感があります。加えて、授業中に座っている行動は当たり前のため、「注目されたり褒められたりする機会がない」という状態が重なります。すると、ネガティブな注目以外に、刺激を得る機会がない状態に陥ってしまうのです。また、苦手な課題をやらなくて済んだ経験や、立ち歩いた先にたまたま絵本があるなど、新しい刺激の出現も、ご褒美の役割を果たしてしまうことがあります。

では、「授業に適切に参加↓楽しい・褒められる」というポジティブな循環をつくるにはどうすればよいのでしょうか。

重要なのはプロアクティブ対応、困った行動が起きる前に、プロアクティブ(予防的)に手を打つことです。授業に適切に参加している瞬間を見つけ、「頑張っているね」と声掛けをし、正解できる簡易な問題で指名するなど、活躍の場をつくります。苦手な課題については、最初からこまめに声掛けをし、早めに援助します。逆に、立ち歩きについては、簡潔に注意するにとどめ、過度な注目を与えないようにします。すると、子供が授業に適切に参加している時間が少しずつ増えていきます。

どんな子も、四六時中困った行動をしているわけではありません。「叱る」に使っていたエネルギーを「良い行動をしているときに注目する」に振り分けていくことで、適切な行動が増え、褒められる機会が増えていきます。その結果、相対的に困った行動が減るというポジティブな循環をつくっていくことができるのです。

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