21世紀の学び 音楽と数学のハーモニー(4)21世紀の教科書はどんなもの? ~STEAM教育~

eye-catch_1024-768_nakajima音楽家・数学者・STEAM教育者 中島さち子

IBMが世界70カ国の経営者に対して実施した「グローバル経営層スタディ2015」では、経営者が今、最も注視すべき潮流が「業界の境界線の消滅(再定義)」であることが報告されています。研究の世界でも数学×物理やバイオ×数学などの共同研究が21世紀に入り急激に増加しており、飛躍成長を遂げている機械学習の世界も、脳神経科学と数学の融合により誕生したといえます。インターネットをはじめとする技術革新は、国境や場所・時間の差も軽々と超え、時代はダイナミックに変動しています。

このような激動の21世紀の中、従来型の「科目別学習」は必ずしも時代に即しているとはいえない状況へと差し掛かっています。もちろん、科目別学習の効率性や意義はまだまだありますし、1つの点を掘り下げる垂直型研究は依然として大変重要です。ただ、時代がこのように劇的に境界を再定義し、融合を繰り返しながら変革を起こしている以上、学校でも総合的な知見、異なる点と点をつなげる力を育成する必要が生じています。

フィンランドの高校では、領域横断のプロジェクト型学習への移行を進めています。私自身も音楽と数学を愛する一人として、積極的に掛け算型プログラムの開発・実践に取り組んでいます。今は、数学×音楽だけでなく、数学×スポーツや数学×デザイン、数学×音楽×踊りのようなプログラムの基礎コンテンツを開発し、ファシリテーションしながら、発見・創造を重視したワークショップ形式で、さまざまな実験を開始しています。

さらに科学全般や工学、テクノロジーやロボットなども組み合わせながら、STEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)を横断的に学ぶプログラム開発を進めたいと考えています。さまざまな分野で活躍するプロフェッショナルたちや産官学の知見を、どのようにつなげていくかも重要なところです。

21世紀の教科書はこうした試行錯誤の中から萌芽し、より総合的な形となると感じています。新しいものが生み落とされるまでは、時間も知財も多く必要になると思いますが、だからこそ「オモシロイ」。未来の教科書は恐らく本だけではなく、動画やファシリテーションを含めた研修、道具、クラウドでの議論の場や協働などを含む、非常にダイナミックなものとなり、従来の教科書の概念を大幅に変えるでしょう。私たち一人一人が新しい時代を創る悪戦苦闘の最中にいます。ぜひ、ご一緒に心躍る未来の学びを創っていきましょう。