21世紀の学び 音楽と数学のハーモニー(2)数学はどんな所に隠れている?

eye-catch_1024-768_nakajima音楽家・数学者・STEAM教育者 中島さち子

まずは数学のお話から。近年、社会人のための数学講座が大人気です。私も東京ガーデンテラス紀尾井町で毎月1回、「社会人のための、数学×○○シリーズ」という講座を企画・開催していますが、毎回すぐ満席に……。社会が数学に関心を持つ流れを感じています。

日本の数学の教科書は、問題の出し方や順番などがかなり深く考えられています。少し残念なのは社会との関わりについて説明が少ない点でしょうか。海外教科書はこの点は深く示唆されています。そのためか、特に女性を中心に、「数学は実生活にはあまり役立たない」と思い込み、数学を嫌いになったり学ばなくなったりする傾向があります。実際は、数学は社会や生活の多様な場に隠れており、特に近年、社会における数学の重要性が急激に高まっています。

意外と身近な数学
意外と身近な数学

米国CareerCast.comの職業ランキングでは、平成26年に数学者が1位になりました。ちなみに29年の同ランキング1位は統計学者。近年はトップ10のうち、約半数が数学をベースにした職業です。数学は、画像認識などの機械学習、AI、ロボティクス、ビッグデータ解析といった分野でも大活躍しています。一昔前はプログラマーが重宝されましたが、現在はAIの台頭に伴い、背後の理論まで把握する数学力が重要視されています。

近年は、他分野との共同研究も盛んです。ポアンカレ予想はペレルマンにより物理的解釈を伴い解かれましたし、近年のフィールズ賞(数学界のノーベル賞)でも数理物理関連研究が増えています。ヒトゲノムプロジェクトでも数学者が大活躍ですし、オバマ元大統領の下では数学×生命科学の研究協力の重要性が説かれ、政府主導で巨額の研究予算が投入されてきました。

音はサイン関数からできていますし、無線LANではフーリエ変換を1秒に何万、何億回も計算しています。高速道路のカーブ設計にも微分方程式などが使われ安全が担保されています。ダ・ヴィンチや葛飾北斎は、数学を芸術に応用していました。

数学そのものだけでなく、数学的思考も重要です。多くの世界で、新たな数理モデル化が進んでいます。数学では、答えは決して1つとは限らず、むしろ自由に、どう対象を捉えるかという視点を置くことができます。日本の算数・数学の教科書は、答えを1つに限ることが多いため、この点も今後改良の余地があるでしょう。

古今東西を問わず、私たちの生活や社会を支えてきた数学。その魅力をもっとイキイキ次世代に伝え、素敵な数学力で未来を築いてほしいものです。