【連載】「深い対話」のある授業づくり 第2回 自己と他者の声を聴き変容

東京都文京区立千駄木小学校 主幹教諭 原 梨絵

 

グループで「他者との対話」

対話型授業において、本校では必ず「自己内対話」と「他者との対話」を取り入れている。「自己内対話」とは、初めに自分の考えをもつことや、授業の終わりに学習を振り返り自分の考えを再組織化することである。「他者との対話」とは、ペアやグループ等の少人数で話し合うことや、学級全体で考えを共有することである。(「自己内対話」「他者との対話」の概念については、多田孝志『授業で育てる対話力』教育出版2012年参照)

自分の考えを十分に持たせる時間を確保しなければ、予備知識のある子供しか発言できない。また話し合いの後、振り返りの時間を確保しなければ、個の学びにつながらず、話し合い活動だけで終わってしまう。

小学校4年生国語の物語文「夕鶴」(作・木下順二)の実践事例では、初発の感想で、学級の多くの児童が「機織り部屋をのぞいたよひょうはひどい。つうがかわいそう」と書いた。しかし、1人だけ「よひょうもかわいそう」という児童Aがいた。この感想を学級で紹介すると、多くの反論にあった。ところが、Aは一貫してよひょうの味方であり続けた。すると、他の児童の感想が変わり始めたのである。

「Aさんの意見を聞いて、もう一度夕鶴を読んだら、よひょうはずっとつうのことが好きだということがわかってきた」「雪の中ずっと、つうのことを探している」「でも、約束を破ったのはひどいよ」「つうがやせ細っていくから、心配していたのかも」

登場人物を好きか嫌いかで判断していた児童たちが、人物の心情や背景を読み取り、多様な視点で物語を読むようになった。

以上は、段階を追って本文を読み、自己内対話と他者との対話を繰り返し行った結果である。読解学習においては、(1)自己内対話(個の読み)(2)他者との対話1(少人数の交流)(3)他者との対話2(学級全体での報告・比較・検討)(4)自己内対話(振り返り)のサイクルを取り入れている。大切なのは、個に始まり個に戻ることである。

最後の場面で教師が「約束を破ってしまったよひょうのことをあなたは許せますか」と問うと、児童は「やっぱり約束は守るべきだった。つうがいなくなったのはよひょうにとって自業自得」「初めは許せないと思っていたけど、今なら許せる。人間は、そういう時もある」と、初めの意見を変える児童もいれば、より確信する児童もいた。

自分の意見を変容させることにこそ「深い対話」の意義がある。