【連載】新・探偵がみた学校といじめ 実態を把握するために 第6回 「チーム」が重要で環境づくり

NPO法人ユース・ガーディアン代表理事 阿部泰尚

 

探偵は、ドラマのように1人の主人公が大活躍をして事件を解決していくことなどない。実際はチームやパートナー制で調査活動を行い、情報や証拠をつかむのが仕事である。そして、大きな問題の調査となれば、「チーム」の力が必要になるのである。

私にとって「チーム」は同志であり、仲間であり、同じ目的に向かう組織のことであり、単なる「集団」とは異なる。「集団」は意思決定権の全てをリーダーのみが持ち、すべての人間が同じ目的に向かうものではない。

私は職業上、人間のトラブルを専門に扱ってきたが、ただの「集団」の能力はリーダーの能力に左右され、「チーム」の問題解決能力には遠く及ばない。

私は探偵社を経営している。手前味噌だが、私の事務所ほど雰囲気のよい探偵社はないと自信を持っていえる。そもそも、探偵調査は机上で行うものではなく、現場で起きているわけだから、現場の担当者はその瞬間瞬間の判断を迫られる。いわゆるリーダーである私が全ての意思決定権を持っているはずもない。私にあるのは、いかに「チーム」として活躍してもらうかという舵取りのみである。

以前、ある小学校から、いじめ被害の相談会を教師と保護者で開くので、と招かれた。職員室に行くと、雰囲気の悪さを強く感じた。先生たちは無言でパソコンとにらめっこ。挨拶もなければ、仲間同士の連帯感も感じない。他人など構わず、ただ目前にある仕事を処理しているという印象だった。

これを見て、大したことはやっていないだろうと率直に感じた。この連帯感のなさでは、「チーム」も成立しないであろうと判断したからである。事実、何もやっていないといえるほどの状態であった。

この学校では、無視や暴力、物壊しといったよくあるいじめが発生していたが、私に依頼をした保護者によれば、すでに他の被害児童がおり、不登校状態になっているということであった。

会議では、学級担任は自らの意見よりも上司の意見を尊重し、その時にしなければならない対策を行っていないと評価できたし、話し合いにおいては、簡単な決定事項すらその場では決めず、後日、回答を基本としていた。学期は進んだが、初期対策やいじめ防止の土壌すらもない学級には、いじめを容認する空気が相変わらず蔓延していた。

この雰囲気では、いじめ防止教室の効果も期待できず、いじめ解消のための「チーム」を作ることもままならないであろうと判断した私は、この保護者と被害児童に、たとえ証拠を取ったとしても、解決は期待できないとして転校を勧めた。精神的にも肉体的にも追い詰められた状態で学習など手につくはずもないから、転校までは子供の安全のために登校を回避することが一番の対策だとも話した。この決断までさまざまなことがあったが、判断ミスはないと考えている。私は子供ファーストなのだ。

後日、この保護者から聞いた話では、他の児童も登校を回避するようになったそうである。

チーム力や組織のリーダーが持つキャプテンシーは、この場合において「いじめをなくす」という目的に通じる重要なテーマである。

縦割りの組織ならばリーダーの資質や度量の問題もあるが、まずは自分たち教職員の環境が、問題の防止や解消に対応できるものかどうかを見定めること。そして、組織を構成する一人ひとりの意識を高め、環境づくりを行うことこそが、その礎になるのを忘れてはならない。

もしも、学年の教員同士で食事もしたことがないというなら、皆で膝をつき合わせて食事でもしたらどうだろうか。よく知る仲なら、同志になれるだろう。全ては空間を取り巻く空気、雰囲気という環境づくりから始まっている。