【連載】新たな教育への提言 第10回 模試とSNSの共通と相違

(株)THINKERS代表取締役 山内学

 

本連載では、現在運営しているTHINKERSという10代の学び合いSNSを開発することになった動機から、今日に至る実践と関連する考察をしてきた。ICT活用がもたらす新たなコミュケーションが教育にもたらす可能性にも触れてきた。これで最終回となるが、あらためて教育をめぐる環境変化と、誰に、何を提供したいか、を整理したい。

改訂学習指導要領の全面実施や平成33年度の大学入試改革などは、周知のことであり、詳細は触れないが、まずこうした教育行政の変化というのがベースとしてある。その上で、学校が提供すべきこと、学校以外の教育事業者が提供すべきことを考えてみたい。

まず、第一義的に、教育サービスを提供するのは学校だ。なので、学校だけで教育ニーズを全てまかなえているのであれば、民間教育事業者はいらない。そうなっていないのは、学校ではまかなえないものを民間教育事業者が提供しているからに他ならない。より効率的な授業や個別指導、テスト対策、加えて全国模試などがある。特に全国模試は、民間業者しか提供できない代物だ。

それは、全国の受験生を「束ねる」ことができるから。そして現行の学力の評価軸はテストの点数と偏差値であるから、これらのデータを広く集められることが民間業者の強みであり、その規模によって模試の信頼性も向上する。

この構造は、実にインターネット的だ。模試の結果は、成績上位者という形で、ある意味表彰される。学力という定性的なものが、点数という定量的なものに変換される。SNSであれば、前者はランキング、後者はフォロワー数などだ。影響力という定性的なものが、ネット上にデータとして定量化される。

まとめると、「ユーザーの集約」「データの集約」「大規模に統一されていること」。この3点が、模試とSNSの共通点であり、存在意義でもある。

現行の学力評価において、模試は重宝されている。生徒個人が利用するだけでなく、学校も積極的に外部模試を活用している。「外部に大規模データが集約されること」の有益性は認識されている、ということだ。教育におけるSNSの活用においても、「外部に大規模データが集約されること」が有益になると確信している。

学校と模試の関係に置き換えてみると、学力を付けるのが学校で、学力を試すのが模試だが、平成33年度以降を想定すると、探究学習を行うのが学校で、それを表現するのがSNSという構図が成立する。

模試とSNSの共通点を説明してきたが、相違点もある。それは「双方向コミュニケーション」だ。模試には「学び合い」という要素はない。ただ成績データが集約されていくだけだ。それに対してSNSでは、データから新たな問いが生まれ、学びを深めていく要素がある。「(SNSに)公表することでモチベーションを持続する」「学年を超えて考えを深めていける」といった生徒ユーザーからのコメントが、それを証明している。

これまでWebで展開してきたTHINKERSを、この春アプリとしてリリースする予定だ。教育の門外漢から試行錯誤して1年半、ようやく次のステップに進める準備が整った。

10代の生徒が何を考え、何を求めているのか、それに対し大人は何が提供できるのか、そこを徹底的に突き詰めて、期待に応えたい。 (おわり)