【連載】こころ元気エクササイズ 若手教師編 第72回 一生懸命の先にあるもの

メンタルトレーナー 加藤史子

 

本当に求めている未来

10年近く連載を書かせていただいたことに心から感謝しています。連載の最後に何を書きたいかを考えてみたら、20代の時に恩師から言われた言葉でした。「なんでもいいから目の前にある仕事を一生懸命やってみると、一生懸命やった先に自分が本当に求めている未来が見つかる」という内容でした。

当時の私は、自分のやっていることは本当にベストなのか不安でした。自分が何をすべきかを懸命に見つけようとしていましたが、見つからないと思っていたのです。そんなときにこの言葉に出会いました。その言葉を聞いて、今は未来の行くべき方向性が見つからなくても、とりあえず今自分に与えられた仕事を懸命にやってみようと決心しました。その決心をして取り組んでみたら、本当に自分の目指す未来がどんどん見つかり始めたのです。

それからの私は、自分がどこか一生懸命になれないようなときには、この言葉を何度も思い出して自問しています。「本気で懸命に取り組んでいるのか」と。人生には何度も繰り返す自分への問いがあります。その自分への問いがどのような問いなのかで、たどり着く場所は変わるのだと思います。

3・11の震災をきっかけに、私は長野県安曇野市に避難しました。避難しながらどこに住むべきなのか、何をすべきなのか、どうやって生きていくのかと1年近く悩んでいるときに、高野登さん(ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー日本支社長)と、作家で俳優の中谷彰宏さんの講演会に参加しました。会場の参加者から「就職活動で大事なことは何か」という質問があったのです。2人の回答は、今も私の心を支えています。

「選ぶところにエネルギーを使うのではなく、選んだ先に与えられた仕事に取り組む時にエネルギーを使うことが大事。わらしべ長者になった青年は、わらを選んでつかんではいない。わらと交換してくださいと言われたときにも、選ぶのではなく求められたものと交換し続けたから長者になれた。私たちも同じ」

自分の悩んでいることにこのことを当てはめて考えてみました。「命が運ばれた場所でまずは一生懸命生きてみよう。その先にきっと見つけられるものがあるはず」。そんなふうに考えたのを覚えています。

あると思えばあるし、ないと思えばないものはなんでしょうか。答えは一つではなくていくつもあると思います。私が見つけた答えは、未来の可能性、希望、愛、信頼、能力などです。まだまだ他にもあるとは思います。

もし、能力があると思ってみたら、未来はどのように変わるのでしょうか。もし、未来への可能性があると思ってみたら、未来はどのように変わるのでしょうか。もし、愛があると思ってみたら、何が変わるのでしょうか。私の仕事はこの質問のように、未来を変えていくことなのだと思います。

「さなぎがこの世の終わりだと思う瞬間、蝶としての世界が始まる」

連載は終わってしまいますが、どのような状況の中であっても、皆様が希望を見つけられることを願い続けています。これまで読んでいただきました皆様に、心から感謝しています。

(おわり)