「恕」の精神軸に取り組む 第7回ESD大賞の実践から

SDGsをゲームで体験した
SDGsをゲームで体験した

グローカル人材の育成めざす
文科大臣賞・岡山県立和気閑谷高校

NPO法人日本持続発展教育(ESD)推進フォーラム主催の第7回ESD大賞受賞校の実践から、文部科学大臣賞を受賞した岡山県立和気閑谷高校(香山真一校長)の取り組みをまとめた。受賞校の実践は、「第7回ESD大賞受賞校実践集」として刊行され、全国のユネスコスクールに配布される。

1.実践のねらいなど

岡山県立和気閑谷高校は、周りを緑に囲まれた静かな環境にあり、普通科とキャリア探求科を設置している。1670(寛文10)年に備前藩主池田光政公が設立した日本最古の庶民の学校「閑谷学校」を源流とし、今年で創学347年を迎える。閑谷学校で行われる釈菜(せきさい:孔子を祀る儀式)では本校の教職員が祭官を務め、代表生徒が参列するなど歴史と伝統を継承している。

全校集会では、オリジナルテキスト『論語百章』を用いて論語朗誦を行っている。独自のスケジュール帳である論語手帳『恕』の週ごとのページに掲げられている『今週の論語』を毎朝朗誦するなど、論語に日常的に接し「仁」「恕」の心の育成を図っている。

今後求められる人材を(1)多様な分野で主体的に活躍できる(2)地元地域を愛し地域創生を担う(3)困難な課題にも粘り強く取り組む(4)積極的にコミュニティづくりに参画する――と位置付け、一方では、国際感覚涵養の必要性から、論語を基盤として多様な主体との連携と海外でのフィールドワークを合わせる取り組みで、心豊かな精神と国際感覚を有し、自分と地域と地球の課題や関係性を結びつけて考え実践できる人材の育成プログラムの研究開発に取り組んでいる。生徒の変容を見取る、参加型評価の教育現場への導入についても研究している。

2.主な実践内容

国際理解を深め、論語を基盤とした協働的な活動を通して、多文化協働力、探究学習力、社会的行動力の育成を目標に、(1)小中高連携国際理解講座(2)国際交流(3)地域と連携した課題解決学習(4)評価研究――を軸に展開している。
主な実践を示す。

(1)小中高連携国際理解講座

▽こくさいフォーラム in Wak=小中高生合同で定期的にフォーラムを開催、ESDの観点から学習を展開した。
主なテーマは、「留学生と交流~和気町フォトラリー」「SDGsをゲームで体験し2030年の世界を考える」「世界の教育の現状を考える」「コトバが無いとどうなる?」「留学生と交流~世界の食文化」「2030年の理想の和気町を描こう」など。

「SDGsをゲームで体験し2030年の世界を考える」の会では、ESDおよびSDGsについての基礎を学習した後、稲村健夫氏(Game Change Labo)を講師にシミュレーションゲーム「2030 SDGs」を体験し2030年の未来を考えた。参加者アンケート「SDGsの17目標の中で関心のあるものは?」では、上位から、貧困、教育、不平等という結果になった。

「世界の教育の現状を考える」の会では、「貧困と教育」をテーマに学習。貧困と教育の現状をクイズ形式で考え、マララ・ユスフザイさんの国連スピーチを動画で見て、意見交換した。「読み書きができない↓安定した職業につけない↓収入が少ない↓教育を受けられない↓読み書きができない…」、この連鎖を教育の力で止めよう、という結論を参加者で導いた。

▽English Camp

「小中学生に最高の思い出を!」を目標に、小中学生が英語に親しめるようなプログラムを高校生が開発・実践。県内留学生とALTを講師に、夏と冬に実施している。
小・中学生のアンケートでは、「満足度を100点満点で表すと=86.5点」「来年も来たい=97.5%」「楽しかったこと=高校生の英語ゲーム、高校生企画野外アクティビティ、外国の方の文化紹介と質問。

(2)国際交流

(1)韓国ASPnet校訪問交流=訪問先は韓国沃川高校。訪問団は生徒4人、引率3人。訪問団の選考は、「全校生徒対象の論語に関する作文審査」「作文審査上位者対象の面接審査」で実施。沃川高校では、日本語クラスの授業に参加。また、ユネスコクラブの生徒と論語や学校生活についての意見交換を行った。高校生同士が英語、日本語、韓国語を組み合わせて交流し、充実した時間を過ごすことができた。

(2)中国上海市嘉定区サマーキャンプ派遣=訪問先は上海市嘉定区。参加生徒2人、引率1人。
和気町が友好都市協定を結ぶ嘉定区が主催。9カ国の高校生が集い、国際感覚を養い、相互理解と友好を深める。生徒は折り紙を披露したり自由時間も英語で話しかけたりして、積極的にコミュニケーションを取った。

(3)地域と連携した課題解決学習

高校を核とした地域の活性化と地域の担い手育成をめざし、平成26年度から総合的な学習の時間に地域と連携した課題解決学習を導入した。地域おこし協力隊が和気町支援職員として本校に常駐し、探究学習の企画立案や地域とのコーディネートを担当している。学んだことを地域で活用し実践から学ぶことで自己成長を図るサイクルのもと、3年間4単位のプログラムを組んでいる。

具体的には、町の中で体験し、調査し、町の住民に教えてもらい、町の施設を活用し、あらゆる場面で町と関わって進めている。

(4)評価研究

教育現場におけるESDの学習評価実践としてMSC(Most Significant Change)をEnglish Camp参加者に実施。MSCは事前の指標設定はせず、現場から集めた「重大な変化」から「最も重要な変化」を選択することで、意識や行動の変容などを明らかにする参加型評価手法である。実施して、(1)学習者が評価に加わるので全員が高い興味関心を示しアクティブに参加(2)指導者側の思いと生徒の学びが紐づけられ学びに対する生徒の納得感が高まる(3)変化の質が評価及び評価を通した学びの質に直結する(4)組織の文化(大切にしたいこと)を浸透させるのに有効――との所感を得た。

3.まとめ

23年に閑谷学校ガイドや学童保育などの生徒会主催ボランティア活動を主軸とし「歴史、文化、伝統」をキーワードにした取り組みでユネスコスクールに認定された。その後、地域連携活動、探究学習、国際理解学習を組み込み、ESDを展開している。地域の教育文化資源を活用し、「仁」「恕」を基盤とした新しい教育に挑戦している。