【連載】口から語る健康 第49回 系統的な歯科保健を

日本大学歯学部医療人間科学教室教授 歯学博士 尾﨑哲則

 

最終回にあたり、約4年間、このコラムを書き続けることができ感謝しています。歯・口を中心とした話題で、よく持ったものと、われながら驚いている部分もあります。

最後になり、ひとつだけ心残りなことがあります。それは、養護教諭の養成課程における歯科保健についてです。私たちの知る範囲では、歯科保健の授業を、ひとつの科目として系統的に教育している養成機関が少ないのです。学校保健の現場で歯科の占める割合は、決して小さくないにもかかわらずです。

これが気になりだしたのは、養護教諭の先生方の研修を頼まれ、極めて初歩的な口腔内の話をしたはずなのに、反応が「……」のときでした。1日の唾液量とかプラーク1ミリグラム中の細菌数などでした。さらに、歯があるから噛めるわけではないなど、口腔の機能や発達の意義などにおいては、かなり大変でした。

養護教諭の先生方は、歯科・口腔関連の知識は乏しくても、学校歯科医からの「知識伝授」を受け、何とか学校での歯科保健を運営しています。しかし、口腔の科学的な知識が偏ることによって、ともすると歯ブラシ一辺倒の指導になったり、必要以上にフッ化物を怖がったり、あるいは歯磨剤の特性を知ることなく、日々の業務をしています。う蝕が大きく減少し、社会との関連が大きく問われる今日に、今までの方法では、今後の学校での歯科保健活動は、かなり厳しいというか、することがなくなる状況になります。

形態から機能へという言い方もしてきました。歯があるのは形態的評価になります。また歯・口が有効に機能しているかが重要な評価であるのは、当然でもあります。機能していればよいのではなく、本質的に、歯科保健に求められるものが何なのか見いだして、そこへ向かうことが必要ですが、これは、地域によっても、個人によっても、年代によっても異なるものでしょう。

そのためにも、基本的な歯科保健教育を受けて、どのような状況においても対応できる養護教諭を養成していくことが必要であると思われます。

今後、多くの養護教諭養成機関で、歯科保健の教育がなされるのを希望して、この原稿を閉じます。

(おわり)