解説 小・中の新学習指導要領と新幼稚園教育要領

小・中学校の新学習指導要領と新幼稚園教育要領が、3月31日に告示された。それぞれの重要ポイントについて、上越教育大学教職大学院の西川純教授と、(公社)東京都私立幼稚園教育研修会の加藤篤彦理事長に解説してもらった。

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小・中学校の新学習指導要領 大学との関係でALは依然重要
上越教育大学教職大学院教授 西川純

告示された新学習指導要領に、アクティブ・ラーニング(AL)という言葉は使われていない。報道によれば、「学習指導要領は広い意味での法令であり、しっかりした定義のない片仮名語はなかなか使えない」のが原因としている。

もし、その報道が正しいならば、その説明は極めて不自然である。「しっかりした定義のない片仮名語」を使って、文科大臣が諮問したのだろうか。さらに、法令だから「しっかりした定義のない片仮名語」は使えないというならば、カリキュラム・マネジメントをなぜ使うのか。カリキュラム・マネジメントの定義と、高大接続に関する中教審の答申にある定義を比べて差があるだろうか。

またALの代わりになる「主体的・対話的で深い学び」には、しっかりした定義があるのだろうか。面白いことに『「主体的・対話的で深い学び」とは』という定義はない。あるのは『「主体的・対話的で深い学び」の実現』の説明があるだけである。そして『「主体的・対話的で深い学び」の実現(「アクティブ・ラーニング」の視点)』と答申には書いてある。もし、ALがしっかりした定義のない言葉であるならば、日本語的にいえば「主体的・対話的で深い学び」も同様に、「しっかりした定義のない言葉」となる。

学習指導要領には、多種多様な人が関与している。ALという言葉を象徴に、積極的に教育改革を願う人たちもいる。一方、それらの人を「浮き足だった」と切り捨てたく願う人たちもいる。今回は後者の意見が通ったのだと想像できる。

国は言葉を丁寧に使う。文科省内部で、特に、ALを推進している高等教育局と、学習指導要領を所掌する初等中等教育局の間で、どのような議論がなされたのか非常に興味深いものがある。

しかし、学習指導要領よりも決定的なものとして、依然変わらないことに注目すべきである。

それは、大学入試。トップ大学は生き残りのために、世界のトップ大学での教育(AL)にシフトする。そのような教育に耐えられる生徒を入試で選ぶ。

トップ大学以外の大学も、時間はかかるが追従する。なぜなら、高等教育局はそれらの大学に対して、ALの方向でのアドミッション・ポリシーを明確化するのを求めているからである。

以上の入試改革は高校教育を変え、それによって高校入試が変わる。それは中学校教育にダイレクトに影響する。

こうして、ALという言葉を消したがっている人の思惑通りにはならず、ALへの動きは今後も続く。

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新幼稚園教育要領 方向目標として幼小で共有を
(公社)東京都私立幼稚園教育研修会理事長 加藤篤彦

10年ごとに改訂される幼稚園教育要領が告示された。改訂にあたり、各幼稚園で要領を理解する上でのポイントをまとめる。

今回は大きな改訂がなされ、章立てが変更となり、その部分に意識が向かいがちだが、まず受け継がれている点をしっかりと押さえておく必要がある。

「環境を通して行う教育」「幼児の自発的な活動としての『遊び』を中心とした生活を通して」「一人一人に応じた総合的な指導」という点は、幼稚園教育の基礎基本であるのを強調しておきたい。

その上で、改訂の1つの柱として、幼児期から高校を卒業するまでを視野に入れた、全体の改訂が行われた。幼稚園教育において育みたい資質・能力(「知識・技能の基礎」「思考力・判断力・表現力の基礎」「学びに向かう力・人間性等」)を明確化し、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が設定された。これは改訂での大きなポイントである。

今までの「領域」は総合的な指導を読み取る視点として維持されているが、今回はそこに10の姿を示して、年長後期から小学校接続への観点としても明確化されている。

これは同時に、幼児期の育ちが10項目から語られるということにつながる。小学校では1年生を、とかく、何も知らない「真っ白」な存在として捉える向きもあったが、今後は10の姿という、幼小接続の共通の土台で引き継げるものになる。

一方で留意しておきたいこととして、この姿の記述は到達しなげればならない目標ではなく、あくまでも、「育ってほしい」という願いの中にある「方向目標」であるのは、幼小の教師間で共通に認識しておきたい。

次のポイントとして、園での遊びや活動が「主体的か」「対話的か」「深い学びとなっているか」というアクティブ・ラーニングの3つの視点が挙げられる。環境を構成し、幼児の遊びや活動を捉え、その姿を教師が振り返り、保育を改善するという営みを通して、主体的・対話的で深い学びのある保育にしていくものである。幼児の実態や育ちの目標に合わせて、幼児自身が多様な活動を自ら選択できるような柔軟な環境の用意は、今までも、これからも、大切である。

3点目のポイントは「カリキュラム・マネジメント」である。各園での幼児教育を通して、どのような幼児を育てたいのかという目標を明確にして、教育課程や指導計画の見直しを続けていく営みを示している。

カリキュラム(「教育課程」「指導計画」)は、単に園に備えておけばよい書類ではない。すべての教師が参画し、年々の幼児の実態に合わせて指導計画や指導案を見直したり、幼児の実態などに合わせて環境を構成したりして、保育実践を振り返りつつ教育課程や指導計画を見直していく営みである。

遊びや活動だけを具体的に記述すると、その活動は「したか」「しないか」という観点で閉じてしまう可能性がある。「教育課程」は入園時から卒園までの教育期間で幼児が育っていく姿を通してまとめたものであるから、この点は、改訂を機に、各園で確認しておくことが大切である。

最後に、障害のある幼児や海外から帰国した幼児などの幼稚園生活への適応など、特別な配慮を必要とする幼児への指導の充実が求められているのも、重要なポイントである。

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