(注目の教育時事を読む)第37回 教育をデザインし直す機会

藤川大祐千葉大学教育学部副学部長の視点

人口急減期の学校教育 大胆な発想で学び方を変革
◇地方から人口が急減◆

4月10日、国立社会保障・人口問題研究所は、「日本の将来推計人口(平成29年推計)」を公表した。これは、平成27年国際調査の確定数が公表されたのを受け、新たな全国人口推計を行ったものである。

参照(PDF)

推計結果のポイントは、(1)30~40代における出生率上昇を受け合計特殊出生率は上昇(2)前回調査と比較して人口減少や高齢化の進展は緩和(3)2065年の総人口・老年人口割合の推計は出生高位仮定で9450万人、35.6%。低位仮定で8213万人、41.2%――の3点である。5年前の前回推計と比較すると、少子化の進行は緩和されているものの、日本がこれから人口急減期を迎えようとしているという傾向は変わらない。

年齢区分別の人口推計に着目しよう。

現状で15歳未満の人口は1600万人弱であるが、2013年に1300万人を割り、2056年に1千万人を割ることが予想されている(出生中位の場合)。今後半世紀で、子供の人口は3分の2以下にまで下回ることとなる。

当然ながら、子供の数は全国で一様に減るわけではない。今回はまだ都道府県別等レベルでの推計は公表されていないので、平成25年に発表された前回の調査を見よう。

平成22年の15歳未満の人口を100としたとき、平成37年は最も高い東京都で88.3、最も低い青森県で64.1である。少子化は地方に行くほど急激に進むのであり、地方においても相対的に人口が少ない地区から進んでいくと考えられる。都市部でも団地等で急激に子供の数が減っている場所はあるが、基本的に急激な人口減少は地方から進むと考えることが必要である。

◆学校教育はどんな様相になるのか◇

すでに、学校の小規模化や統廃合は多く進められており、人口減少は今さら始まった事態ではない。だが、これまでは日本の全人口は急激に減っていなかったのに対し、今後は全人口が急激に減り始める。子供が減るだけでなく、大人も減り、存続自体が怪しくなるコミュニティが増えていく。

こうした人口急減期の学校教育のあり方については、これまでもさまざまな形で検討がなされてきた。例えば、国立教育政策研究所「人口減少社会における学校制度の設計と教育形態の開発のための総合的研究」の最終報告書(平成26年3月)では、教育行政の圏域、ICT活用の可能性、社会教育による代替の可能性、地域人材との連携、部活動のあり方など、多様な観点で人口減少社会における学校教育のあり方について、説得力ある議論を行っている。

明治維新以降、経済が発展し、人口が増加してきた中で、近代的な学校制度が果たした役割は大きい。全国どこにいても、子供は一定以上の質の教育を受けることができた。テレビがようやく行き渡り、自動車もあまり普及していなかった1970年頃までは、高等教育を受けた教員が検定済み教科書を使って授業を行うことは、国民の知的水準の担保に大きく寄与してきたといえる。

だが、交通網や情報ネットワークが発展した現状では、均質的な学校教育を全国に行き渡らせることの意味は自明ではなくなっている。地方の子供たちは勤勉に学習して偏差値の高い学校に進学しても、地元には公務員以外の仕事は乏しく、都市部に出て行くしかない。これでは、地方の人口減少が加速するだけだ。

◇大胆な人材育成策を◆

すべての地方コミュニティが生き残るのは難しいかもしれないが、多くのコミュニティにおいて、近郊農業や観光など、地域の資源をうまく生かして地域経済を活性化し、地域人口の急減を抑える方法は残されているように思われる。そのためには、他の地域との横並びの発想を捨て、大胆な動きをつくっていく必要がある。だが、これまでの均質的な学校教育はこうした動きを担う人材の育成には不向きだ。各地で大胆な人材育成策が考えられるようにすべきではないか。

例えば、小・中学生段階の児童生徒がすべて何らかの「会社」に所属し、その「会社」で必要な研修を受けつつ、「会社」の仕事をしていくのを義務教育とする地域があってよいだろう。観光や農業、福祉などをテーマにした仕事を子供たち中心で行い、商品開発をしたり、地域でイベントを仕掛けたりする。子供たちの「会社」に投資したいと考える大人たちは、こうしたビジネスに強い指導者を雇うなど、子供たちを支援する。教育の専門家も関わり、仕事の中で子供たちが義務教育で求められる知識を学び、使えるように方向づけていく。

千葉市と千葉大学では、平成22年度から、小学生対象の起業家教育プログラム「西千葉子ども起業塾」を開催している。小学生時代に参加した人は、中学生、高校生になってもスタッフとして関わってくれている。彼らの姿を見ていると、これまでの形にとらわれない教育のあり方を考えさせられる。人口急減は、学校教育をデザインし直すチャンスである。