(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 業務改善アドバイザーを派遣

学校の多忙化は解消できるか

文科省は、弁護士や校長ОBなどを学校業務改善アドバイザーに任命して、全国の教委に派遣する事業を始める(電子版で4月4日、紙面版で4月10日付既報)。

学校の多忙化解消が主な目的で、アドバイザーによる多忙化解消の成功ケースによる実践事例集を作成し、全国の学校に周知していくという。

教員の多忙化に悩む学校現場にとっては朗報となろう。

だが、教員の多忙化解消を、業務改善や学校外の専門家との連携といった方策で、本当に実現できるのだろうか。

■月に80時間以上の残業、教員の多忙化は過労死ライン

連合が先ごろ発表した教員の生活時間調査によると、小学校教員の72.9%、中学校教員の86.9%が「週60時間以上」働いていると回答している。

週40時間労働が適正とすれば、週20時間以上の時間外勤務をしていることになり、1カ月当たりに換算すると「20時間×4週=80時間」で、月に80時間以上の残業をしている計算だ。

「月80時間以上」の残業は、厚労省が定めた過労死ラインと同じ水準である。

これは、多くの教員がいつ過労死してもおかしくない状況にあるのを物語る、深刻な事態だといわざるを得ない。

しかも、民間企業雇用者や一般公務員ならば、残業には時間外勤務手当という対価が支払われるが、公立学校の教員にはわずかな優遇措置(教職調整額4%)があるだけで、時間外勤務手当は全くない。

現在の学校は、実は教員のサービス残業によって成り立っており、ある意味で「ブラック職場」といわれてもおかしくない。

ただし、教員という種類の人間は、基本的に子供のためならどこまでも仕事をする。つまり問題は、「多忙」そのものではなく「多忙感」にあるともいわれている。

■業務改善で仕事は減らない

教員が「多忙感」を感じる内容としては、意味のない会議や書類の作成、過熱した部活指導、多様化した保護者への対応などが挙げられる。

このため学校マネジメント、ICT活用による校務の効率化、部活指導や保護者対応の専門家を学校や教委に派遣して学校現場の業務改善を促すという文科省の事業に、ある程度の効果が期待できるのは間違いないだろう。

だが、新学習指導要領の具体化などさまざまな改革が求められている学校において、業務改善によって生み出された時間は、さらなる業務にあてられてしまうのではないか。

これでは「多忙感」の解消を実現できたとしても、「長時間勤務の解消」という本来の問題は、取り残されてしまう可能性がある。

この背景には、授業だけが仕事の欧米の教員とは異なり、日本の教員の仕事の範囲にはほとんど際限がないという事情がある。

子供のためという名目で「仕事を手放すことができない」教員の意識を改革しない限り、学校における長時間労働はなくならないだろう。

■「チーム学校」と多忙化解消は別

ところで、今回のアドバイザー派遣は、各種の専門家と教員が協働する「チーム学校」の発想に基づいているともいえる。4月からスタートした外部人材による部活指導員の制度化なども、「チーム学校」の姿の一つだ。

最近では「チーム学校」を教員の多忙解消策と位置付ける見方も多いが、これは正しくないと考える。

「チーム学校」は、社会や家庭・地域が多様化する中で、外部の専門家の視点を学校教育に生かすのが本来の目的であり、教員の業務の一部を外に「丸投げ」することでは決してない。

さまざまな専門家と教員が、有機的に連携・協働することと、教員の多忙化解消は無関係なのだ。

外部の専門家との協働が、逆に業務の増加を招く。これは、生徒指導などの関係者なら周知の現実だろう。

「チーム学校」を、教員の多忙化解消の一環として捉えるのは好ましくない。「チーム学校」で専門家を加えた分だけ、教員定数を削減できるという考え方も同様に正しくない。「チーム学校」の意味は、もっと別なところにあるはずだ。

アドバイザー派遣による業務改善は、多忙化解消への第一歩としては評価できる。

だが、現在の学校現場が、教員の「無償の長時間労働」を前提に成り立っている状況を改善するためには、より抜本的な方策が強く望まれる。