(公財)消費者教育支援センター専務理事・首席主任研究員 柿野 成美
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北欧第2弾として、2回にわたり、スウェーデンの消費者教育をご紹介します。
SDGs―持続可能な消費への関心の高まり
フィンランドと同様、スウェーデンにおいても、北欧閣僚協議会の「消費者教育戦略」を踏まえて消費者教育が進められてきました。その中心テーマは、「持続可能な消費」と「メディアと技術リテラシー」。消費者庁のWEBサイトには、2017年に教員を対象に実施した、環境に配慮した持続可能な消費についてのアンケート結果が掲載されています。
アンケート調査結果は、7~9年生の義務教育学校と高等学校で、家庭科、自然科学、社会科、地理を担当する教員900人を対象としたものでしたが、その当時「授業の中でほぼ半数がSDGsを活用している」という結果が目立っていました。今から2年前の調査結果ですが、全国の先生方と研修などでお会いしている筆者の感覚からすると、日本とは状況がかなり異なっているようです。
家庭科「健康・経済・環境と消費者知識」
筆者は16年、ストックホルム市街から近いリディンゲ島にある公立小学校に訪問し、小学校の家庭科の授業を見学しました。この学校では、6年生と8年生、9年生が3年間で118時間の家庭科の学習を行っていました。
教科名は家庭を意味する「HEM」ですが、その頭文字はH=健康、E=経済、M=環境(サステナビリティ)という意味が込められています。
教科書をみると(作成は1冊のみ)、食の内容が全体の半分程度を占めていました。ヒアリングした教員は、食を通じて、健康、経済、環境を考えた消費者になることを目的に家庭科の授業を組み立てていると話していました。
日本のように教科書を多用しないということでしたが、ノルディックスワンなどの環境ラベルや、FSC、GOTS、国際フェアトレード認証ラベルなどが教科書には掲載されていました。
「持続可能な消費」の実践のヒント
この学校では、持続可能な発展に取り組むパイロット校になっていることもあり、家庭科の授業が重要視されているというお話でした。特に、授業では、自分の消費生活とアジア、アフリカの生活がどのようにつながっているのか、グループごとに調べ学習をしていました。
生徒は海外の生活をステレオタイプに考える傾向にあるので、その国の文化を調べさせ、他教科の学習内容を総合化してプレゼンテーションをしていました。そこでは中国やインドの人権問題、アフリカの紛争鉱物、南アフリカの森林問題などのテーマが生徒から出てくるので、最後には未来のための料理として「持続可能なピザ」をつくることをテストにしたそうです。
スウェーデンには「持続可能な消費」の実践のヒントがたくさんありそうです。
(参考文献)消費者教育支援センター(2017)「海外における消費者教育 ノルウェー・スウェーデン」