横浜国立大学教授 松葉口 玲子
多様な消費者教育?
前回、ナショナル・コア・カリキュラムをご紹介しましたが、日本の学習指導要領ほど全国画一的な拘束力はありません。
ナショナル・コア・カリキュラムに基づきながらも、各地域の状況に応じて学校が独自に、さらには教師自身が独自に、カリキュラムを実施します。よく知られているように、教師は非常に人気の高い職業であり、保護者を含めて社会全体から信頼されているのです。
例えば私の勤務校のブランチ・オフィスがあるオウル大学の附属中学校では、消費者教育は教科横断的能力のうち、「自分自身のケアと日常活動のマネジメント」や「仕事や企業の世界での能力」に関わり、社会科では、消費者の権利、取引や規制、起業家教育を、家庭科では、調理、環境に配慮した家庭経営を扱っているとのことでした。
その上で消費者教育の授業として紹介されたのは、家庭科の調理実習に相当するものでした。
これには正直驚きましたが、背景には、同校における教育全体のミッションそのものが、社会の責任あるメンバーになれるようにすることであり、多様なプロジェクト学習の展開など、もともと消費者市民教育と通底していることがあるのかもしれません。これについては今後、確認していきたいと考えています。
アクティブ・ラーニングに適した学習環境
消費者教育はもともとアクティブ・ラーニングを重視していますが、フィンランドではそれを実現できる学習環境の素晴らしさを実感しました。
教室の机だけでも、通常の机以外に、三角形の机(組み合わせると五角形になる)や、ひし形の机(2辺に座ることによって話しやすい距離感になる。組み合わせて大きくもできる)など、バリエーションがあります。椅子も同様です。多目的に使用することのできるスペースもありました。
ICTも充実しており、スマートボード(電子黒板)やデジタル教科書(教材)、生徒用ノート型パソコンなどが定着していました。机や椅子、学習スペース、教材、教具それぞれに目的と狙いがあって、課題に適した環境を選んでグループ学習が進められるようになっているのです。
昼食はランチルームで各自取って食べられるのですが、野菜、たんぱく質、炭水化物をバランスよく取れるよう、プレートに色分けの工夫がされていました。
さりげないこういうことも、消費者教育ということもできるでしょう。
リラックスした職員室で英気を養う
大学附属小中学校だけでなく普通の公立小中高校でも、職員室はとてもおしゃれ。
ゆったりしたソファとすてきなインテリアで、日本の職員室のイメージからは想像できないほど恵まれた環境でした。
ここで教師たちはお茶を飲みながら話に花を咲かせるのだそうです。こうした余裕が子供の学習内容を豊かにするのでしょう。