教育新聞愛知県版 創刊30周年を迎えて

平成3年4月、創刊された教育新聞愛知県版が令和3年3月、30周年の節目を迎えた。教師の指導力向上、学校運営への示唆、特色ある研究・実践など、愛知の教育の羅針盤を目指した愛知県版の30年を振り返る。

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中央教育審議会が、「生涯学習の基礎整備」や「新しい時代に対応する教育諸制度の改革」について答申し、「学校五日制の実施」「授業内容の3割削減」「総合的な学習の導入」に至ったころ―平成2年4月のことである。県小中学校長会や郡市教育長の要職にあった方々が、多様な問題意識や専門的な視点を兼ね備えた教師の育成や、加速度的に変化する社会、度重なる教育改革への対応のため、教育新聞「三河支局」の開設を企図した。

それまで名古屋地区・尾張地区の教員は、教育新聞を「名古屋支局」から購読していたが、三河地区の購読者は皆無であった。相次ぐ教育改革が進む中、情報収集に努め、研修に励むのが教師の本分である。そのために、「名古屋支局」に続いて「三河支局」を創ろうという声が高まった。そして、三河小中学校長会に「支局開設」と「教育新聞の購読」についての諮問がなされた。同校長会はそれらの承諾に加えて、「愛知県版」の発行と購読者の募集についても申し合わせた。

こうして平成3年4月、「愛知県版」は創刊され、名古屋支局・三河支局で起動することとなった。さらに平成8年、「尾張支局」が開設された。ここに名古屋・三河・尾張からなる愛知支部が結成されることとなった。

以来、教育新聞は、学ぶ教師に向けて相応の情報を発信し、研究・実践・修養に寄与することを願いとしてきた。とりわけ愛知県版は「愛知の教育の今」を象徴したものであり、これからも義務教育の貴重な資料として息づいていくことが期待されている。

現在、愛知県版は、義務教育の貴重な資料として「愛知県公文書館」に収蔵されている。

草創期に関わった方々から「県版に寄せる思い」をいただいた。

回顧 太田弘氏(尾張支局顧問)『教育新聞』を語るとき、真っ先に想い出す人がいる。中村巽先生―。本県に『教育新聞』を浸透させた方である。

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40年前にさかのぼる。昭和57年4月16日。義務教育課歓送迎会の席上だった。私は2年先輩の中村先生と盃事を介して出会った。終宴までの3時間余、雑談を交え、多岐にわたる談義の中で、意気投合したのは、「愛知の教育のためにひと汗かこう」という気勢であった。

そして、それは、常に中村巽先生との二人三脚で実行に移されていくこととなった。

最初に取り組んだのは、荒れた中学校の立て直しと校則問題であった。県教育委員会・義務教育問題研究協議会の意をくみ、県内全ての教育事務所に生徒指導主事および電話相談員を配置した。併せて愛知県警察本部少年課と、県教委事務局との間で人事交流を導入するなど、指導体制も刷新した。

さらに高校を巻き込んだ生徒指導研究大会を実現することもできた。

が、その一方で「校則是非論」が急浮上した。世論からの批判に学校現場は困惑したが、校則は生徒の健全育成に欠かせないとの認識のもと、敢然と対峙(たいじ)した。特にCBCテレビの特番「ザ・校則」は、後世への教訓として残す価値がある。

こうした多忙な日々にあっても、全国連合小学校長会長との面談も重ねた。それは海外研修派遣について「愛知試案」を承諾させたかったからである。

また、中村先生が熱望された広報活動の充実に関しても力を注いだ。『教育愛知』『校長会報』『愛教』『教育新聞』などの刊行物を、「いつでも、だれでも、どこでも、手軽に、いつまでも」活用することによって、教員のレベルアップを図ろうというものだ。

―中村先生との出会い。あの日から十余年。紆余(うよ)曲折曲折はあったものの、当初目指した事業はおおむね成就できた。ご支援いただいた各位に謝意を込めて成果などを列挙する。

〇全連小海外研修の導入

〇教育新聞県版構想完熟

〇学校週五日制先導試行

〇小中退職校長会結成

〇複合選抜制度策定支援

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最後に付言を謹呈する。中村先生の数ある業績のうち、『教育新聞愛知県版』構想は、40年前の義務教育課歓送迎会の折には、既に先生の胸の内に秘めてみえたことを、同席した者として証しておきたい。

県版発行の英断 岡田和幸氏(元教育新聞常任顧問)

平成2年夏、三河校長会で中村巽・山下和男両先生から教育新聞購読について説明があった。本紙紹介の後、両先生が愛知県版を編集発行し、本紙購読者には無料で提供するとのことであった。

県版は1面に県の教育情報、2面は県内小中学校の研究実践を掲載する。学校教育力の充実を図りたいとのことであった。

私は県版に魅力を感じて購読することにした。まさか後に私自身が県版編集に携わるなど想像もしなかった。

9年12月、定年後勤めていた県教育施設の退任を翌年3月に控えていた私に、中村先生から県版編集の依頼があった。県版については求められるままに私の考えを述べていたので、先生の配慮を感じて引き受けることにした。4月号に平成10年度県内小中学校長一覧を掲載すること、紙面の刷新を図ることの2点が提示された。

紙面の刷新は、かねがね私見を述べていた「管理職の学校経営上の課題とその方策」、購読者との双方向を意図して「読者の窓」の創設を提案し、了承された。

そこで誕生したのが、「教職管理職セミナー」である。読者に親しみを込めて手紙形式で書いた。現職中の学校経営を振り返り、実現できなかった夢を託した。また、当時、「親父の会」が各地で誕生していた。親父の会から校長への提言も手紙形式で書いた。

「県版の『こだま』と『管理職セミナー』を毎号切り抜いて、職員会やPTAの会合で話題提供している」「県版だけ有料にして購読できないか」などの問い合わせがあり、うれしかった。

「読者の窓」は現在も継続されているが、次々に新企画が登場し紙面の充実が図られている。これからも購読者の声を反映し、読者と共に作る県版であってほしい。

故人となられた中村巽・山下和男両先生の県版発行と無料提供はまさに英断であった。

愛知県版に寄せる思い 神谷龍彦氏(名古屋支局顧問)

教育新聞愛知県版の発行30周年、おめでとうございます。

私が教育新聞に顧問として直接関わりをもつことになりましたのは、平成27年度からで、まだ6年余しかたっておりませんが、振り返ってみれば現役の教員時代にも教育新聞には大変お世話になりました。

生徒集会での校長講話や入学式・卒業式などの式辞やあいさつでは、教育新聞の情報を大いに利用させていただきました。

一番のお気に入りは「提言」のコーナーで、毎回各地区の重要なポストについておられる方々が、その時機に応じた先見的な提言をされており、その内容をアレンジしながら自分の学校の経営に使わせていただいたことがたびたびありました。

とりわけ愛知県版の学校研究紹介は、三河・尾張地区の研究指定校や先進的な教育方法を取り入れた研究が提示され、名古屋地区だけの狭い範囲での研究に陥りやすい負の側面を補っていくいい刺激となっています。

また、愛知県版の毎回の楽しみは、「こだま」の欄で、ウイットに富んだ内容や、その時々の話題を適時取り上げ、深く掘り下げた独自の視点が紙面を豊かにしています。

平成27年度からは、愛知県版の編集に名古屋支局も加わるようになり、校長会を中心とした先生方の原稿や学校努力点の研究紹介、名古屋市教育センター情報なども取り上げられ、名古屋に関する内容が増え、より身近なものになってきたことは喜ばしい限りです。

平成28年度には電子版がスタートし、令和元年5月号からは愛知県版も電子版で閲覧できるようになりました。SDGsの観点からもペーパーレスの取り組みは、これからの地球環境保全の在り方として望ましいことだと思います。

今後は、幼稚園や特別支援学校の情報なども多く掲載し、愛知県版がますます充実して、愛知・名古屋の先生方の研修・実践に役立つよう心から願っております。